読みました

本は、てきとうに図書館の棚から選んでくるので、あたりはずれがあります。
 まずは、キャスリン・マゴーワン著「待ち望まれし者」上下(マグダラのマリアによる福音書おとぎばなしで暇つぶしがしたければ・・・。
 リチャード・パワーズ著「われらが歌う時」上下 これは凄い。表紙見返しの言葉「音楽・歴史・時間をめぐる知が惜しげもなく投入され」っていうのは本当。鳥と魚にたとえられた、ハンガリーからの亡命物理学者の父と逆境のなか声楽を学ぶ黒人女性の母、父はかつてのウィーンでの感動の記憶から、母は音楽を志すもととなった憧れの黒人女性歌手マリアン・アンダーソンが聞きたくて行った、1939年連邦議会前の野外コンサートで出会う。野外の無料コンサートになった経緯、いわばヨーロッパからの凱旋公演であるにもかかわらず、アメリカ独立革命婦人会が憲法会館の使用を拒否した為。
 音楽で結ばれた二人に三人の子供。どうやら上から順に外見は黒い血が勝っていくようだが、早くから天才声楽家として才能を開花させる長男ジョナ、 兄に引っ張られて動く次男のジョセフ、人種問題に鋭敏でのちに活動家と結婚ブラック・パンサーに入党する妹ルース。母親が実家と絶交状態になる原因となるのだが、数学・科学は父が音楽と美術は母が教える自宅学習、そして家族を繋ぐ合唱の毎日。あえてイディッシュも教えず黒人ルーツの音楽も教えず。母親の死をきっかけに妹は姿を消す。時間は過去と未来を行ったり来たり。最初のコンサートから流れる時間はジョセフの語りで、所々に 過去の出来事が挟まり、背景のように人種暴動・キング牧師の暗殺・第二次世界大戦・日本への原爆投下まででてくる。警官に停められないように母は車に乗る時はいつも後部座席。幼いころ子供たちに衝撃的な写真を見せる見せないで両親が話し合う黒人少年(エメット・ボボ・ティル)の惨殺事件。人種問題はジョセフの妹への気遣いとともに 断片的に提示される 事実に直接は関わらなくとも黒人の視点から その気分というかが こちらの心に突き刺さる。どうやらマンハッタン計画に協力したらしい父は母の死後も母と対話し時間の謎を追い求め、一人渡欧した兄は中世の古歌にたどり着く。妹ととは、妹の夫が警官に撃たれ死んだあと、亡き母の実家で再会する。父の最期を看取り受け取った遺言を伝える。「通奏低音のように流れる人種問題・時間の秘密」 同じく表紙見返しの言葉だが、そのとおり。とにかく、読むことをお勧めします。まるでこれは「交響曲」ものすごい情報量だと思う。現代を表わすのにはこんな方法が有効なのかも。
 あの3,11からずうーと新しい局面が開けて原発の重苦しい歌がつづいている。冷やし続けるしかない状態を「冷温停止」といい、原発再稼働がなければ10%の値上げという。責任追及もなく東電を解体する気もなく原発を廃止する気もない。憲法に関連したドイツと日本の比較の授業のなかで、彼我の戦争責任に対する対応をみて、ベルンハルト・シュリンクが「日本人は断絶より継続が」といっていたが、殺人の時効を延ばし今や時効なしのドイツと、17年の日本。第一条天皇制の存続のために、第九条戦争放棄・戦力不保持を掲げたがこれを徐々に骨抜きにしたこの国。戦争犯罪の解明・賠償保障・二度と戦争を繰り返さない、つまり戦争責任・戦後責任・戦前責任{被害者・世界・歴史にたいして次世代の人間も含め、今を戦前にしない責任}できればうやむやにしたいんだろうか。同じ曲だね。NHKラジオの経済展望で内橋克人さんがナオミ・クラインの「ショック・ドクトリン」を勧め、イラク空爆後200あまりあったイラク国営企業が民営化され外資が入りすっかり資本主義化されたという。やはり、あんな多国籍軍に参加したのは大間違い。日本もどさくさまぎれにTPPなんかを押し付けられてはならないと内橋さんはいう。肝心のインドも中国も加盟してはおらず。韓国はEU・米と個別に経済条約。で、オバマは自国の景気回復・雇用の拡大になると言ってますけど・・・。